原 健一郎 様のインタビュー

原 健一郎 様
(株式会社NPT)
「オーダーメイド型」の免疫療法による”がん治療”へ!
副作用が少ない安全で有効性の高い医療を目指して
(目標額:10,000,000円)
プロジェクトの概要
“食道がん”に対する完全個別治療の治験開始「PAPCワクチン」
がんによる死亡者数は年々増加の一途を辿っています。
がん治療で最も一般的な「抗がん剤」は、個々の免疫応答性の違いに対応していない為、その効果には
限界があります。
また、がん細胞だけでなく正常細胞にもダメージを与える為、副作用のリスクが高く、
「がんで苦しんでいるのか、抗がん剤で苦しんでいるのかわからない」という声がしばしば聞かれる
状況です。
私は、三重大学大学院在学中から10年以上にわたり、がんの免疫細胞療法の研究に取り組んできました。
この分野の持つ可能性に魅了され、研究を社会に役立てたいと強く思うようになっていきました。
前職の新日本製薬では、遺伝子細胞治療の権威である、谷 憲三朗先生の下で研究員として出向し、
弊社NPTの開発業務にも携わりました。2020年に社長に就任し、「PAPCワクチン」の開発を推進しています。
がん治療において免疫細胞を活用するアプローチは、多くのバイオベンチャーで試みられていますが、
私たちが開発した「PAPCワクチン」は、個々の患者の状態に応じた「オーダーメイド治療」を行う点で他と異なります。
免疫細胞の中でT細胞という細胞は、がん細胞の「マーカー」を発見しそれを目印にがん細胞を攻撃します。
従来の免疫細胞療法では、例えば「A」というがん細胞のマーカーを攻撃するT細胞を体内で増やし、
「A」をもつがん細胞を攻撃するという治療をどの患者にも画一的に提供していました。
そのため、個々のがん細胞に適した「マーカー」をターゲットにした治療ではありませんでした。
その点、「PAPCワクチン」は、患者一人ひとりによって種類が異なる「ネオ抗原」というマーカーをターゲットにすることで、
その人に適したがんの「マーカー」をターゲットにした完全個別化治療を提供することが可能になります。
また、ネオ抗原は、正常細胞には存在しない抗原なので、これを標的とすれば、がん細胞をピンポイントで攻撃することが可能となり、
患者にとって副作用のリスクが低く、高い安全性が期待できます。
保険適用への道のりと今後のビジネス展開
現在、がん免疫細胞療法の多くは自由診療(保険外診療)で行われ、いくつかのクリニックでは弊社と似た完全個別化治療薬を
提供するところもありますが、自由診療は一般的に治療費が非常に高く、すべての人が受けられるものではありません。
この課題を解決する為にも、私たちは保険診療の下で受けられる完全個別化治療薬の実現を目指しています。
海外では既に、モデルナやビヨンテック等の大手製薬会社が個別化治療薬の臨床開発を進めています。
日本ではこれまで、臨床試験に挑戦する会社はありませんでしたが、昨年11月、私たちが日本初となる、
完全個別化治療薬の治験計画書届を提出しました。
治験を行い、実際に患者の下に届くには3年ほどかかりますが、
治験データは都度開示しながら完全個別化治療を普及させていきたいと思っています。
「PAPCワクチン」は食道がんに対する治療薬で、年間約9,000人の食道がん患者のうち、約3,100人を治療対象と見込んでいます。
治験を終え、薬事承認後の2028年以降は医療機関と提携し販路を構築し、弊社自らが製造販売を行うとともに、
次のがん種への適応拡大も目指します。
クラウドファンディングを利用した目的

クラウドファンディングは、私たちのように、世の中を変えるような新しい挑戦を試みるバイオベンチャーにとって、
その試みが将来的・社会的にどれほどニーズがあるのかを、市場調査できるところに大きな利点があります。
また、個人投資家の興味が高い事業であれば、資金も集まりやすくなります。
私たちにとって、会社のファンとなって応援してくださる方々の存在は、大きな心の支えになっており、
皆さまの温かい励ましの言葉に勇気づけられて、開発を続けることができております。
クラウドファンディングを通じて、プロジェクトを広く知ってもらい、会社のファンになってくださる方を募れるということは、
会社にとって大きな財産であると感じています。
実際、がんの新薬に対して多くの方が強い関心を持っていること、ご家族ががんに苦しんでいる方などが、私たちのような会社に
支援してくださっていることを実感し、がん患者の不安や悲しみを取り除けるように、この薬を早く届けたいという思いが一層強く
なりました。
これまで2回行った「株式型クラウドファンディング」により、約500名の株主を持つベンチャー企業になり、ベンチャーキャピタルも
含めて8億円を超える資金調達をしてこの事業を進めてきました。
そして2025年1月30日には、1株当たり1,200円の発行価格で新株発行を行い約3億1千万円の上場時ファイナンスを行い、
東京証券取引所「TOKYO PRO Market」に上場しました。
支援を行った取扱ECF事業者に対する感想
今回のクラウドファンディングは、前回とは異なる別の事業者にお願いしました。
今回は、できるだけ早く資金調達を完了させて、開発に着手したいという想いがあり、とにかく急いで実施しました。その為、私たちのスピード感に合わせて、迅速に対応していただけるかが事業者選びで、非常に重要なポイントでした。
実際に事業者の方は、私たちに合わせて柔軟に対応してくださり、必要な手続きや社内対応を
進めてくださったおかげで、早く資金調達を完了することができたので、大変ありがたかったです。
クラウドファンディングを利用して、良かった点・苦労した点
良かった点
- 会社HPでのPR活動より圧倒的に宣伝効果があり、様々な方に見ていただけたこと
- プロジェクトが世の中で注目されていることを実感できたこと
- 応援してくれる株主の方が増えたこと
苦労した点
- 投資家の方に少しでも分かりやすく説明する為の準備に苦労したこと
- パワーポイントや文章でも伝わりにくい部分は動画を多用した為、作成などに苦労したこと
今後、クラウドファンディングを利用する方へのアドバイス
新しいことにチャレンジする際は、様々な課題や壁に直面されるかと思います。
そんな時、支えとなるのが会社のファンや株主の方の応援だと日々感じています。自分たちへの応援の声を大きくする意味で、
ベンチャー企業のクラウドファンディングを活用した資本政策は、今後、会社にとって大きな意義があると考えます。
また、株主が増えることで、外部からの監視の目が働き、ガバナンスが強化される効果もあると思います。
株主が多いことにデメリットを感じる方もいるかと思いますが、今後上場を目指される会社であれば、
しっかりとしたガバナンスが機能していることをアピールできる点でも、効果的だと思います。
