【CF活用後の会社の歩み】田ヶ原 絵里 様のインタビュー

すへての人の食事を
おいしく・楽しく・健康的にしたい

株式会社CAN EAT田ヶ原 絵里

インタビュー内容

CF資金調達最高額:
2,496,000

支援者数:
144

設立:

2019年4月

事業内容:

CAN EATの開発・運営

受賞歴:

  • 「あいまちPITCH CONTEST 2024」最優秀賞
  • 「日本アントレプレナー大賞受賞2022」
    SK Dream Japan賞 等多数

1. 事業概要(起業~クラウドファンディング~事業展開)

CAN EATというWEBサービスの構想を考える一つのきっかけは、
2015年に母が米やジャガイモなど数種類のアレルギーを発症し、
個別対応がきめ細かなお店でないと外食ができず、好きだった外食を
控えるようになったことです。

同じような思いをしている人、アレルギーを持つ人は世界中に多くいるにも
関わらず、社会的な対応が遅れている状況にも疑問を持ちました。

実際、食物アレルギーがある人の割合は増加傾向にあり、令和4年度に行われた
アレルギー疾患に関する疫学研究では、食物アレルギーの有病率が約15.8%とも
言われています。

一方、外食産業は、慢性的な人手不足の上、頻繁な法改正や、無償での細やかな対応が求められやすい業界です。
複雑なアレルギーパターンに対応するには、料理に携わる方に専門的な知識をさらに身につけていただく必要があり、
今まで以上に現場にも大きな負担を強いることは明らかです。

全ての情報をアナログで管理するには限界があり、その課題を解決するためにはDXの活用が不可欠な領域だという結論にいたりました。

私はまず、自分が考えている事業がユーザーに必要とされているかどうかを見極めるために、
2019年に、「個人利用」向けのシンプルなサービスを開始しました。利用者が自分の嗜好(食べられないもの、好きなもの)を登録し、
友人に共有することで、外食やギフトをプレゼントする時の失敗を減らすことを目的とした内容です。

ちょうど同時期に、ユーザーの需要を確かめることや、起業資金を少しでも集める方法として「クラウドファンディング」という
仕組みがあることを知りチャレンジしました。

そして事業を進めていく中で、2020年からは次の段階である外食産業やホテル、結婚式場などに対してアプローチを始めました。

まず、これまで食事会などで幹事を通して行われていたアレルギー確認の情報伝達ミスを防ぐため、
会食ゲスト本人が直接料理長に伝える「アレルギーヒアリングサービス」の展開を進めました。

これは、QRコードを本人が読み取ってアレルギーを予め登録し、料理長が確認できるシステムです。

その後、スマホで原材料ラベルを撮影し送信すると、専門家による目視チェックやメーカーへの問い合わせ代行を経て、アレルギー表やビュッフェカードを簡単に
作成できる「アレルギー管理サービス」も新たに加わりました。

現在のCANEATサービスの利用状況は、コロナ渦において、
老舗有名式場「八芳園」がCAN EATを導入したことを皮切りに、
ホテルや外食チェーン店、旅行代理店を中心に約100社と提携し、
BtoBを中心とした事業へと進化しました。

個人が利用しやすいだけでなく、事業者にとってもアレルギー対応に取り組み
やすいプラットフォームへと成長し、現在、CAN EATのサービス利用者は、
延べ60万人以上に達しています。


2. 資金調達とクラウドファンディング

私が、クラウドファンディングを活用しようと思ったきっかけは、東京都主催のビジネスコンテストでファイナリストに選ばれた際に、
ファイナリストに対するスポンサー特典の一つに、クラウドファンディング事業者のサポートを受けられる機会があったからです。

周囲の信頼できる方々も、金融機関に対して自身の事業に需要があることをアピールできる為、今後の「資金調達」にも繋がりやすいと背中を押してくれました。

クラウドファンディングを実施して最も良かった点は、アレルギーで困っている多くの当事者の方の声が聞けたことです。
お金を払って支援してくれる方々の意見は、普通のアンケートよりもずっと「熱量」が込められており、実際にプロジェクトページを見て応援してくれたことで、「自身の事業に需要があるということへの確信」を持つことができました。

通常であれば、「アレルギーがある人」というニッチな領域の人と出会い、そして情報を集めることは難しいことだったので、
この熱量を持った意見がその後の事業を考えるのに大きく貢献してくれました。

クラウドファンディングで、資金調達という目的以上に、ヒアリングに応じていただける方々と繋がり、
支援者として引き続き応援もしていただける機会を得たことが、起業時の不安を払拭する大きな助けとなりました。
また、今年の2024年にはVCで約5,000万円の資金調達も達成しました。

私たちは最終的に、「アレルギーを持つ人が『怖くない外食』を実現する」ことを目指しており、
CAN EATは日々アップデートし続けています。


3. 活用する方へのアドバイス

前回のインタビューでも申し上げたように、やはり「丁寧なコミュニケーション」が非常に大切だったと思います。

クラウドファンディングを始めた当初は、私自身起業したばかりで、
コネクションもなく、やれることは何でもやらなければならないしんどい時期でした。

しかし、応援してくれる方々に常に感謝の気持ちを持って丁寧にフィードバック
することで、その後も引き続き応援者で居続けていただけたのだと思います。

また、クラウドファンディングによって自身の事業プランを過信しすぎると
危険だということも学びました。

実は、クラウドファンディングの目標を達成した後、事業プランへの確信が持てたところで個人向けサービスを進めたのですが、
趣旨には賛同していただきましたが思うように普及せず、それだけでは事業として成り立ちませんでした。

マネタイズの方法や事業拡大の方法をさまざま考えていった結果、見つかったサービスが現在のBtoBを中心とした事業展開に
つながっています。

クラウドファンディングは、自身の事業を説明する際のアピールポイントになり、市場分析にも大変役立ちましたが、お客様のニーズや課題を知るだけでなく、解決する方法も常に試行錯誤して進化させていくことの重要性も、同時に学ぶことができました。

現在「CAN EAT」は、個人間のアレルギー共有サービスから、事業者と提携し幅広いサービスを提供するBtoB事業に更新されています。すべての人がおいしく安心して外食を楽しめる社会の実現に向けて、今後もさらに拡大していきたいと考えています。

クラウドファンディングを通じて得た経験やリアルな声を大切にしながら、新たなチャレンジを続けていきます。