岩井 慎太郎 様のインタビュー
岩井 慎太郎 様
(株式会社WAKAZE)
三軒茶屋にSAKEのブリューパブを作り、次のステップで海外へ
(目標額:5,000,000円)
プロジェクトの概要
自前の「醸造所」を持ちたい
われわれは日本酒の世界に新しい風を吹き込もうと会社を立ち上げました。ところが、日本では「清酒」を作ろうとすると、酒造メーカーとしての製造免許がなかなか下りないことがわかったのです。そこで、われわれはファブレスメーカーとして製品を設計して製造委託し、オリジナルの日本酒を2年間販売してきました。
でもやはり、自分たちの手で酒をつくりたい、だったら日本の規制の及ばない海外に酒蔵を持つことをめざそうと決めました。ただし、ファブレスでやってきた自分たちが、いきなり海外に酒蔵を持つのはハードルが高いので、まずは自分たちで酒造りの経験をしっかり積まなくてはならないと思いました。
そのような中で、「清酒」ではなくて「その他の醸造酒」だと酒造メーカーの製造免許が取れる可能性を見つけたのです。「その他の醸造酒」とはたとえば「どぶろく」や「ボタニカル」「玄米酒」などです。それらを造るための自前の「醸造所」を都内に持とうと決めました。そして飲食店併設型の「ブリューパブ」にすることによって、造りたてのフレッシュなお酒の美味しさを発信したいと思ったのです。
クラウドファンディングを利用した目的
資金調達とファンづくりのため
「醸造所」を造るためには設備資金が必要になります。その一部をクラウドファンディングで募集しようと決めました。第一の目的は資金調達です。もうひとつはファンづくりです。クラウドファンディングを利用しているエンドユーザーは、新しいものに対する高い感度のアンテナを持っています。お店やお酒を応援してくれるファンを増やしていきたいということです。
補助金などの情報については、ふだんからチェックしているのですが、今回の東京都の補助事業のことは、弊社代表者の母親が日経新聞の記事で東京都のクラウドファンディング補助事業のことを偶然知ったことがきっかけです。クラウドファンディングを行うことは決めていたので、さっそくネットで調べて、ぴったりだなと思い申し込みました。
支援を行った取扱CF事業者に対する感想
食や酒に強い事業者で、大手百貨店でPRの場もいただけた
クラウドファンディング事業者の担当から、プロジェクトの打ち出し方や、ページの作り込みについて細かくアドバイスいただきました。われわれ事業者サイドは、熱意にあふれすぎて、何でもかんでも書いてしまいたくなるのですけど、そこをうまく取捨選択してくれ、「お客さまが求めている情報はこうです」とか「ここはイラストを使った方がわかりやすいです」など助言してもらいました。また、リターン設計についても、来店可能な東京近辺のエンドユーザー向けと、お酒を発送する全国のエンドユーザー向けと大きく2つに分けた上で、ライトな支援者向けとしっかりした支援者向けの軸で設計するというアドバイスも役立ちました。
われわれにとって、ありがたかったのは、今回のクラウドファンディング事業者が食やお酒の分野に対して強かったことです。食やお酒に興味が強いエンドユーザーをたくさん抱えているとも言えます。クラウドファンディングのプロジェクト実施中に、新宿の大手百貨店で試飲販売会を一緒に開いてくれました。リアルなプロジェクトPRの場をいただけたのはとても大きかったですね。
クラウドファンディングを利用して、良かった点・苦労した点
良かった点
- ファンづくりに役立った点
- 先に資金調達でき、安心して製造・施工などに打ち込めた点
苦労した点
- リターン設計やページの作り方などの「見せ方」を工夫した点
- 通常業務と並行して、リターンに設定した酒造り体験を実行した点
今後、クラウドファンディングを利用する方へのアドバイス
ワクワクするような「リターン設計」が何より大事
リターン設計は何より重要だと思います。つい「お酒一本のリターン」「お酒二本のリターン」「お酒六本……」という具合に決めてしまいがちで、ただ量が増えているだけでは、ワクワクしませんよね。エンドユーザーから見て、魅力的で、ワクワクしてはじめて支援につながると思うのです。通常業務との両立もあり時間的には大変でしたが、酒造り体験というリターンを提供できたことは、支援者の獲得に効果的であったと思います。
クラウドファンディングは、見込客を最初に獲得できる手法なので、これから事業を始めようという方は利用しない手はないでしょう。何か事業を始めたいけれど先立つものがない、そんな方には一歩踏み出すための大きなツールだと思います。しかも、補助してくれる東京都の制度もあるのですから。
今回はわれわれも東京都の補助を受けられて助かりました。お客さまが「次は何を作ってくれるのだろう?」とワクワクするようなお酒造りを心がけていきます。
取扱CF事業者のコメント
WAKAZEさんとは、季節ごとに合った造りをすることで、「同じ米・同じ酵母」から作るにも関わらず全く異なる味わいになる日本酒『四季酒』、オーク樽熟成で洋食とのペアリングを楽しめる日本酒『ORBIA(オルビア)』、柚子や檸檬、山椒、生姜といった和の柑橘やハーブを日本酒造りに取り入れたボタニカルSAKE『FONIA(フォニア)』の3種類のお酒のプロジェクト、そして東京都の資金調達支援事業である三軒茶屋の醸造所オープンのプロジェクト、と全部で4回ご一緒させていただきました。
Makuakeでは日本酒のプロジェクトは多数ありますが、商品自体のプロジェクトを実施してから醸造所を開設するにあたってのプロジェクトは初めてでした。実際にやってみると今回の醸造所のプロジェクトでは支援者427人、600万円もの支援金額を調達され、多数メディアに掲載され、非常に反響があったと感じています。
WAKAZEさんのようにまずは商品のプロジェクトでご一緒し、ロイヤルカスタマーをつくりながら店舗出店などビジネスのステップアップのタイミングで複数回使っていいただく事例も今後も増えていくと思います。