日経MJ「ゆる起業のススメ」

【50歳からのゆる起業】知識や経験 強みに信頼構築

更新日:2020.03.27

 山口諄也さん(82)は、印刷会社やIT企業を定年まで勤めた後、「携帯システム研究所」(東京・中央)を立ち上げました。現在個人事業主としてホームページ制作の代理店を行っています。ホームページを立ち上げたい人に技術的なアドバイスや改善提案を行いつつ、ホームページを納品するというお仕事です。

 しかし、山口さん自身がホームページを制作するのではなく、大手制作会社の代理店として活動しています。従業員を雇用することなく、ご自身が直接クライアントと会って相談にのっていらっしゃいます。山口さんは、「自分のペースで働くことができ、安定収入が得られるので、この仕事を続けやすい」とおっしゃいます。

 このように、定年後に始める仕事の中でも、山口さんのように、実際にサービスを提供する会社に「つなぐ」お仕事は、人気が高いです。「販売代理店」「紹介代理店」「営業代行」「営業支援」等の様々な言い方がありますが、いずれも人と人を「つなぐ」お仕事です。紹介手数料やマージンは依頼主とサービス提供会社の取引が成立したときだけ受け取る契約もあれば、取引が続いている限り、毎月得られる契約もあります。

 山口さんの場合、紹介した方が月額プランを継続している限り料金の一部を得るビジネスモデルになっています。山口さんは現在、飲食店や美容院など取引先が40社ほどあります。

 このビジネスモデルは安定収入が得られるため、年金の上乗せ収入になると好評です。初期投資がかからないため、金融機関から融資を受ける必要もありません。その点で赤字になりにくい・失敗しにくいビジネスと言えるでしょう。

 「つなぐ」お仕事は他に、大手新電力会社の代理店として、電力の販売を行う事業や、レンタルプリンターの代理店等があります。定年後に「つなぐ」お仕事をしたい方は、代理店募集の説明会に参加したり、自分が気に入った製品やサービスを提供している会社に直接アプローチして、代理店をしたい旨を申し出るのも良いでしょう。

 一方で「つなぐ」お仕事は、その製品やサービスに対する知識が必要で、自社の強みや他社との違い等も説明できなければなりません。お客様に満足していただき、そのサービスを継続してご利用いただかないと継続収入になりませんので、信頼される人間関係づくりが大切です。

 山口さんは、創業当初なかなか仕事が決まらず苦労したそうですが、前職で原価計算について詳しくなっていたので、ホームページ制作の話をする前に、まず原価計算についてアドバイスして信頼を得たそうです。前職で培った知識や経験を強みに、顧客との接点を作る成功例です。

 山口さんに、創業4年目で黒字化し、20年以上も事業を続けられている秘訣を聞きました。「体力的には無理をしないように気を付けています。お客さんにホームページで売り上げが上がったと言われると、とてもやりがいを感じます。目標100社に向けてこれからも精力的に活動したい。」とおっしゃっていました。(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)

銀座セカンドライフ株式会社 代表取締役 片桐実央 プロフィール

片桐実央

行政書士、1級FP技能士。学習院大学法学部卒業後、花王株式会社 法務・コンプライアンス部門法務部に入社し、法律の専門家としてアドバイス。その後、大和証券SMBC株式会社引受審査部に入社し、IPO支援を経験した後、祖母の介護をきっかけに、一生を通じて生きがいを感じる生活を実現するための支援がしたいと思い、2008年7月銀座セカンドライフ株式会社を設立、銀座総合行政書士事務所を開業し現在に至る。

シニア起業の支援会社として、①起業コンサル・事務サポート(起業相談サロン)、②レンタルオフィス運営(アントレサロン)、③セミナー交流会(アントレセミナー交流会)を開催している。年間の講演は100回を超え、毎月150件の起業相談を受け、これまで7,000件を超える。

著書一覧

初心者のためのセカンドライフ起業スクールハンドブック『初心者のためのセカンドライフ起業スクールハンドブック』(神奈川県生涯現役促進協議会)
かながわシニア起業ハンドブック『かながわシニア起業ハンドブック』(神奈川県)
あおもりシニア起業ハンドブック『あおもりシニア起業ハンドブック』(青森県)

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調査期間:2023年1月13日~2023年1月16日
調査元:JAPAN TRUST RESEARCH
対象:20代~60代の女性・男性(n=105)
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