更新日:2016.02.17
現在、建築資材の販売会社に勤めている男性(60)が、同業での独立・起業を考えました。お世話になった取引先に独立する旨を伝えたところ、「独立しても引き続き担当をお願いしたい」とのこと。今の会社とのトラブルは避けたいので、社長とどのように話せばよいか悩んでいました。今回は前職の顧客を、起業後の顧客にする場合の注意点についてご紹介します。
もともと勤務していた会社と同業で起業する方は多いです。ただ、元の会社が持つ顧客情報を自分の起業時に活用してしまうと、個人情報保護法、不正競争防止法のほか、雇用契約や就業規則などさまざまな法令や契約に違反する可能性があります。元の会社とトラブルになり、場合によっては訴訟に発展する可能性も。そうならないためには、主に3つの方法があります。
(1)営業譲渡-顧客を譲ってもらう対価として、一定の金額を元の会社に支払います。譲渡の条件や金額を明確にするため、契約書を交わすことをお勧めします。
(2)元の会社からの再委託-顧客と直接、取引契約を結ぶのではなく、間に元の会社を入れ、元の会社から仕事を請け負います。顧客から見ると、自社が再委託先になります。直接契約に比べ、利益は減ります。ただ、その顧客は元の会社の経費を使って営業し、獲得した取引先でもあるため、その顧客と取引を続ける限り、元の会社が一定の利益を得るようにする、という考え方です。元の会社からすれば、担当者が替わったために顧客を失う、という事態を防げます。
(3)元の会社との紹介契約-顧客と直接取引し、元の会社とは顧客紹介契約を結んで、一定の紹介手数料を支払います。手数料は例えば「売上金の○%」といったかたちです。ただ、元の会社は自社の売上金がいくらなのか、客観的に知るすべがほぼありませんので、信頼関係がなければこの方法は難しいでしょう。
男性は社長と話し合い、その取引先とは、今の会社からの再委託を受けて仕事をすることにしました。起業直後で資金面が一番苦しいとき、一定の売り上げを立てられるので、とても助かると話しています。
行政書士、1級FP技能士。学習院大学法学部卒業後、花王株式会社 法務・コンプライアンス部門法務部に入社し、法律の専門家としてアドバイス。その後、大和証券SMBC株式会社引受審査部に入社し、IPO支援を経験した後、祖母の介護をきっかけに、一生を通じて生きがいを感じる生活を実現するための支援がしたいと思い、2008年7月銀座セカンドライフ株式会社を設立、銀座総合行政書士事務所を開業し現在に至る。 シニア起業の支援会社として、①起業コンサル・事務サポート(起業相談サロン)、②レンタルオフィス運営(アントレサロン)、③セミナー交流会(アントレセミナー交流会)を開催している。年間の講演は100回を超え、毎月150件の起業相談を受け、これまで7,000件を超える。 |
『初心者のためのセカンドライフ起業スクールハンドブック』(神奈川県生涯現役促進協議会)
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『かながわシニア起業ハンドブック』(神奈川県)
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『あおもりシニア起業ハンドブック』(青森県)
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調査期間:2023年1月13日~2023年1月16日
調査元:JAPAN TRUST RESEARCH
対象:20代~60代の女性・男性(n=105)
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