2021年の4月から改正高年齢者雇用安定法が施行されました。今回の改正点について押さえておくべきポイントをご紹介します。
目次
1.高年齢者雇用安定法って?これからの高齢者雇用はどう変わる?
今回改正された高年齢者雇用安定法は少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正されたものです。
大きな改正点は、働く意欲のある従業員が【70歳】になるまで就業機会を得られるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を事業者へ努力義務が課されたことです。
あくまでも「努力義務」であるため、急に世の中が大きく変わることはないと予想されますが、10年、20年前とは着実に高齢者雇用は変化してきていると言えます。
高年齢者も、実は働く意欲は旺盛です。内閣府の調査によると、現在仕事をしている60歳以上の方の約8割は、65歳を過ぎても「働きたい」と回答しており、事業主としても経験、知識、熟練した技術の豊富な人材は、失いたくないという実情もあるのです。
60歳で定年し、その後は退職金と年金で悠々自適な老後、と言うのは今や遠い昔の事。いくつになっても働ける人は元気に働きましょうという時代は既に始まっています。
2.コロナ禍での起業傾向
人生100年時代と言われて久しいですが、大事なのは健康だけではありません。
もちろん健康も大切ですが、生きていくためにはお金が必要です。昨年からのコロナ禍の影響で、起業される方は全体的には明らかに減少していると言えます。
日本政策金融公庫総合研究所の「2020年度新規開業実態調査」では、開業者の約8割がコロナ禍の影響を受け売上や従業員数の減少、事業の進捗に影響があったと結果が出ております。
起業しようと考えていた方も、今はその時期ではないと慎重になっている傾向がありますが、逆にチャンスととらえて起業される方も、決して少ないわけではありません。
コロナ禍によって働き方の価値観も大きく変わり、雇われる働き方以外の方法に興味を持たれた方も多いため、落ち着けば大きな起業の波が来るのでは、と考えています。
コロナ禍が収束するまでの時間をその準備期間と捉え、色々な情報を集める時間にするのも良いのかも知れませんね。
3.シニア層の起業
3-1 どんなことで起業する?
起業と言えば、「早く脱サラして、田舎で夢だった蕎麦屋をやりたい!」なんて、よく聞きます。
しかし実際のシニア起業ではそのような起業はあまりオススメしません。
せっかく起業するなら、夢だったことをやりたいというお気持ちもよくわかりますが、初めての起業で未経験のことを始めるのはリスクが非常に高い、というのが大きな理由です。
まずはサラリーマン時代にしていた事や、得意なことで小さく起業されるのをお勧めしています。
シニア起業で多い業種としては、会社員時代の経験や人脈を生かしたコンサルタント業や営業代行などが多い傾向です。事務所や在庫を抱えなくて良いという点も、始めやすい理由と言えます。
また、近年の傾向として、起業するタイミングが早くなってきています。以前は定年後を見据えての起業が多かったですが、今や雇用される以外の選択肢が増え、早い方では40代から起業する方も多いのが現状です。
3-2 起業資金はどれくらい?
シニア起業では融資などを受けず、退職金やそれまでの貯蓄を元手に起業資金100万円以下で始めるケースがほとんどです。シニア起業は会社員の時のように利益優先でガツガツ儲けようとするよりも、やりがいを長く得られることを大切に考えて、大きなリスクは侵さずに、軌道に乗ったら少しずつ事業を広げることをお勧めしています。
また、資金調達といえば以前は融資が一般的でしたが、現在は起業したての方も使える補助金や助成金の数も多くなっています。
加えて、近年では「クラウドファンディング」という調達手段も確立し、大変な人気です。
アイディアと熱意で、クラウドファンディングに挑戦してみるのも良いですね。
3-3 気をつけた方がいいこと
起業初期に陥りがちなこととして、初期投資に費用をかけすぎることです。
せっかく起業するのだから、と最初から立派な事務所を借りてみたり、広告に費用をかけすぎる等です。軌道に乗るまでには案外時間がかかります。起業してしばらくの間は固定費を出来るだけ抑え、見込客リスト作りや販路開拓に力を入れる方が良いでしょう。
会社員時代の肩書や成功体験に頼りすぎるのもいい傾向とは言えません。
起業したらまた一から勉強する気持ちで、柔軟性をもって周りの意見を聞きましょう。起業の先輩や周りを巻き込んで出来ることも、成功のカギの一つと言えます。
3-4 大事にしたいこと
今回の高年齢者雇用安定法の改正によって、事業主は従業員が70歳になるまで働ける場所を提供する努力をしなければならなくなりました。このことで、雇用されて働くという選択肢が70歳まで可能になりました。
起業すること、雇用されて働くこと。働けるということはどちらでも素晴らしいことです。
大事にしたいことは、年齢を重ねて今後の働き方や生き方を考えた時に、「やりがい」を感じ働くことだと思います。やりがいをもって働くことで、社会とつながっている実感を得られる。是非、今後の働き方を考える時間を持ち、ご自身とじっくり向き合ってみられることをお勧めします。