起業する時には、最低限必要となる「起業資金」を調達しなければなりません。「起業資金」には、最初にかかる経費(初期投資)と毎月かかる経費(運転資金)の2つがあります。
起業後、すぐに売上が立つことはなかなかありません。一般的な業種であれば、経費をかけてから売上が上がるまでのサイクルは3ヶ月程度と言われていますので、最低でも運転資金の3ヶ月分を用意して起業しましょう。調達方法としては、出資、個人借入、融資、補助金・助成金などがあります。
ここでは、銀行やその他の金融機関から「起業資金」を調達する方法=「融資」について、そのメリット、デメリットを解説します。
1.銀行からの融資
メリット
- 金利が低いため、起業時の負担を抑えることができます。
- 審査が厳しい反面、融資実行によって、対外的な信頼や信用につながります。
- 大手銀行の場合、支店も多く、利便性があります。
デメリット
- 大手銀行は大企業中心と言え、設立直後の会社や中小企業にはなかなか融資を実行しません。中小企業にはハードルが高いと言えます。
- 業種や経営状態、事業の計画性など非常に厳しく審査されます。
- 申請手続きが煩雑で、また融資実行までに時間がかかる傾向があります。
2.信用金庫からの融資
メリット
- 地域密着型であるため、比較的中小企業にとってもハードルが低いと言えます。
- 会員に対し親身になって対応してくれるケースが多く、融資を受けることで、顧客やビジネスパートナーを紹介してくれる場合があります。
デメリット
- 信用金庫を利用するには、まずは出資して会員となる必要があります。また、解約の手続きなどにも時間がかかります。
- 営業エリアが決まっているため、都市銀行のような利便性はありません。手続きなども、基本的に窓口にて行う必要があります。
3.制度融資
メリット
- 県や市などの地方自治体、信用保証協会、金融機関の3者が協力して行う融資であり、自治体の斡旋を受けていることから、比較的審査が通りやすいと言われています。
- 固定金利であり、長期返済が基本のため、ゆとりを持った返済が可能です。
- 信用保証協会が保証するため、無担保・無保証(代表保証は必要)で借入ができます。
- 地域によっては、行政が金融機関に支払う利息や、信用保証協会に支払う保証料を、一部負担してくれる場合があります。
- 創業前の申請も可能です。
- 行政が経営相談にものってくれます。
デメリット
- 地方自治体、信用保証協会、金融機関という3者が関係することから、手続きが煩雑であり、また融資実行までに時間がかかる傾向があります。
- 金融機関に支払う利息以外に、信用保証協会への保証料が発生します。
- 自治体によっても制度の内容は異なりますが、税金を納付していることが前提となります。
- 融資を受ける自治体の地域内で、一定期間事業を営む必要があります。
4.日本政策金融公庫の公的融資
メリット
- 銀行に比べて低金利であり、また貸付条件も良いのが特徴です。
- 審査の可決率が高く、設立直後や中小企業にとってもハードルが低いと言えます。
- 創業前の申請も可能です。
- 融資相談や経営のアドバイスを受けやすいです。
デメリット
- 一般の金融機関に比べて、審査に日数がかかると言われています。
- 制度融資とは異なり、保証人が必要となります。
5.マル経融資
メリット
- 商工会議所により推薦されることで、無担保・無保証(代表の保証も不要)での借入が可能です。
- 融資枠が広く、また金利が低いのが特徴です。
- 経営指導員による経営相談を受けることが出来ます。
デメリット
- 創業後1年以上が経過していることや、同じ商工会議所の経営指導を6か月以上受けるなどの条件があります。
- 商工会議所への参加が必須になります。
おわりに
融資について、そのメリット、デメリットを解説しましたが、一般的に借りやすさの順番は、日本政策金融公庫、制度融資、信用金庫、銀行と考えられています。そのため、創業時などは、まず公的金融機関の中でも、特に中小企業を対象にしている「日本政策金融公庫」や「制度融資」を考えてみると良いでしょう。ただし、融資を受けることだけに捉われるのではなく、ご自身の事業の内容や規模に応じた適切な金融機関はどこであるかをよく考え、今後の事業展開を考えた上で、金融機関との長期の信頼関係を築くことも大切です。
また、融資とは、助成金や補助金とは異なり、あくまで「借入」であり、返済する必要のある資金となります。公的な融資は、起業する人にとって優遇措置が多く、低金利で借りやすい制度にはなっていますが、それでも返済が必要なお金ですので、資金繰りを十分に吟味し、必要な額だけを借りるなどの注意が必要となります。