起業のきっかけをお聞きしてみると、趣味が高じて、人との出会い、退職や自身の知識と経験を活かしたかった、という答えが返ってきます。今回は3つの事例をご紹介します。
S氏の場合
S氏は、設計図の中国語翻訳、大手バイクメーカーの国内代理店などを行う事業で起業。取引先との兼ね合いで、初めから法人を設立して起業しました。
起業をしたきっかけは、「ツーリングクラブでの仲間との出会い」でした。
S氏は、平日は仕事、週末には同世代のメンバーとツーリングを楽しむ生活を数十年続けていました。
その同世代のツーリングクラブの仲間の中に、現在代理店となっている大手バイクメーカー社長のE氏がいらっしゃいました。
バイク雑誌やネットの口コミを見ては、部品を買い揃えるほどのバイク好きだったS氏は、E氏と意気投合し、次第に事業についての話をするようになりました。
「海外ブランドが進出し、1台1000万円クラスのオートバイが飛ぶように売れている。中国の富裕層をターゲットに拡販を狙っている。その為、現地で仲介できる人材が居れば…」というE氏の話を聞いて、協力できると思ったのがきっかけでした。
S氏は、サラリーマン時代、中国からの資材調達をやっていたので、現地に知り合いも多くいました。貿易関係の知識や経験も豊富だったこともあり、E氏と代理店契約を結ぶこととなりました。
個人事業主で起業し、代理店となることも検討しましたが、輸送費に莫大な費用が掛かることを知り、法人登記をして起業することを決意。レンタルオフィスを活用することで、他にかかる経費を抑え、自己資金100万円で合同会社を立ち上げました。
S氏が合同会社を選んだ理由は、設立にかかる費用を押さえるため。いずれ収益が上がった際、取り扱う商品ラインナップも増やし、株式会社への変更も考えているとのことです。
F氏の場合
F氏は、営業マン教育や販促支援の事業で独立し起業。その後、株式会社を設立し、徐々に売り上げを伸ばしています。
F氏は、大手下着メーカーに15年間勤め、新商品のマーケティング調査や販促活動に携わりました。その後、大手メガネチェーンに転職。転職後、業界初となるYouTubeを使った動画広告の作成に携わり、売上増加に貢献した実績がありました。
起業したきっかけは、知人の紹介で一人の若手営業マンのH氏と知り合ったことでした。
H氏は独立志向が強く、売上に悩む企業の課題解決をしたいという思いから会社を辞め、企業を外からバックアップしたいと訴えていました。その熱意に後押しされ、次第に「自分がやりたいことを楽しんで仕事をしたい」という思いが強くなり、起業を志すようになったとのことでした。
その後、ご家族に相談。定年を控えていたタイミングだったため、奥様も驚いていたようです。しかし、それまで「楽しく働く」という意思を貫き、結婚後も度々転職をしていた経緯があったこと。また、お子さんが社会人となっていることもあり、「やってみれば」と背中を押してくれたようです。
F氏は、会社を辞めて独立。その後、取引先企業からの信頼を高めたいという理由から株式会社を設立。現在、設立しておよそ1年が経過したところです。取引先も徐々に増え、「沢山の仲間と楽しく働き、月曜日が待ち遠しくて仕方ない。そんな会社にするのが夢です」と話し、今後に向けて意気込んでいました。
M氏の場合
アメリカのスーパーマーケットなどで、30種類以上の乾燥野菜をバラ売りし、自分好みの味噌汁やスープを作ることができる…という商品の企画・開発・販売をしているM氏の事例についてお話しします。
M氏は、もともと友人の誘いでアメリカに渡って和食店の料理人として働いていましたが、両親が病気になったため日本へ帰国。帰国後、収入源が無くなり、窮地に立たされましたが、在米中の体験がヒントとなり、起業を決意されたとのこと。
きっかけは「アメリカでの食生活についての違和感」でした。
日本と異なり、アメリカでは食べる人が自分の好みで具材を組み合わせるのが一般的だそうです。例えば、インスタントラーメンにヨーグルトやジュースを合わせるといったようなことが当たり前のように行われており、その光景に衝撃を受けたとのことです。
その光景を目の当たりにしたM氏は、次第に「食べる人が自由に具材を選び、レシピを作れる商品を開発できないか?」と考えるようになり、帰国を機に本格的に取り組むことを決めたそうです。
アメリカの企業との取引をすることになるため、法人設立を考えたM氏は、専門家に相談し、手続きが簡単で、且つアメリカでは株式会社よりもメジャーといわれる合同会社(LLC)で法人を立ち上げました。その後、商品アイデアを実現する為、日本国内の食品メーカーに営業をかけ、乾燥野菜とみそ汁の素を製造しているメーカーとの連携が実現。製品化してアメリカへ出荷し、現地での販売をスタートさせました。
販売を開始してまだ間もないため、売れるまでの現状は厳しいとM氏は語っていますが、今後に向け、「需要はあるはず!今後は小売店、レストラン、モーテルとも取引をして拡販を狙いたい。」と意気込みを語ってくれました。