持続可能な社会の実現に向けて世の中の機運が高まる中、リサイクルショップで必要な古物商は旬の職業として注目を集めています。事業を始めるためには古物商の許可申請を行って「古物商許可証」を得る必要がありますが、申請の過程で営業所の設置も求められます。費用が抑えられるという点ではバーチャルオフィスやレンタルオフィスを営業所としたいところですが、それは可能なのでしょうか。ここでは、古物商の営業所の要件などについて説明します。
目次
【1】そもそも「古物商」ってどんな仕事?
古物商とは、中古品の売買や交換を事業として行う法人・個人のことをさします。SDGsなど持続可能な社会への取り組みが重視される中、古物商はますますその存在感を増しています。古物商といえば、中古品を引き取りに出向くなど作業が大変なイメージもありましたが、インターネットが普及した現代では、オンライン上ですべて完結できるケースも増えたため、開業しやすさという点で環境が整ってきました。市場規模も拡大傾向にあり、2021年では2兆6988億円であったものが2025年には約3兆5000億円に達するという財務省の推計もあります。
1)古物商を開業するには?
各都道府県の公安委員会(窓口は警察署)の「古物商許可」が必要で、許可を得るためには「営業所」の設置が必須です。営業所とは「古物売買の拠点となる場所」のことです。インターネットで古物商の売買する場合は必要ないと感じられるかもしれませんが、事務処理などを行う場所としてやはり「営業所」は用意しなければなりません。
2)古物商の許可を得るために必要な営業所の条件とは?
古物商の許可を得るためには、設置する営業所が「独立して管理できる場所であるか」「一定の使用権限を有しているか」という条件を満たしていることが必要となります。それは営業実態の確認を容易にするためです。古物品の中には盗品や偽装品等が紛れ込む恐れもあります。そのためいつでも取引状況を確認できるようなオープンな環境を整備しておくことで、不正行為の発見を早めたり、抑止効果を図ったりすることができるようになるのです。
【2】営業所がなくても古物商を行えるのはどんなケース?
古物商の許可申請を行う際は、「営業所なし」という項目も選べますが、これは店舗が不要な「行商」などの稀なケースとして限られます。それなら「シェアオフィス」や「レンタルスペース」を営業所にすればいいと思うかもしれません。確かに、部屋を複数人で共有して使うシェアオフィスも、一定の時間だけ作業場所を借りるレンタルスペースも、費用が安くて利用しやすいというメリットがあることから営業所として使いたいところです。しかし営業所には設置条件があります。
「独立して管理できる場所であるか」「一定の使用権限を有しているか」という2点です。シェアオフィスはシェアしている点で独立性はなく、レンタルスペースは時間で借りている点で一定の使用権限を有さないため、両者はこの条件を満たせていません。そのため、営業所ではなく「本社」として登記して利用することはと可能です。
「バーチャルオフィス」も、本社として法人登記することが可能ですが営業所として申請することはできません。なぜなら、住所はあっても実態のある空間はないからです。営業所として認められるためには独立性と一定の使用権限が必要でしたが、バーチャルオフィスではこの条件を満たすことはできません。
【3】古物商許可申請の営業所の選択肢について
1)古物商許可申請の営業所として何がふさわしいか?
それは営業所が「独立して管理できる場所であるか」「一定の使用権限を有しているか」の2条件を満たしているかどうかに尽きます。その意味では「レンタルオフィス」で古物商許可申請を行うのも選択肢の一つとなるでしょう。必要な設備が揃っており個室などの物件もあることから、先の2条件をクリアする要件は満たしているともいえます。
2)レンタルオフィスでも古物商の許可は得られる?
レンタルオフィスで古物商の許可が下りるかどうかは、個室で長期レンタルであることが必須です。事務所が共有であったり、一週間単位などでの短期レンタルであったりする場合は、営業所としての条件を満たさない恐れもあります。さらにオフィスの運営会社の承諾も欠かせません。
この他、賃貸オフィスや自宅を営業所として古物商許可申請を行うのであれば許可を得られる可能性は高いといえます。ただし、賃貸オフィスもしくは自宅が賃貸の場合では貸主の許可が必須です。また自宅がマンションの場合には管理組合の許可なども必要となります。
営業所の設置などは実際に手間のかかる作業ですが、面倒だからといって無許可のまま営業を始めたりすれば「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」が科せられることもあります。必ず許可を得てから事業を始めるようにしましょう。
レンタルオフィス「アントレサロン」の個室プランで、古物商の申請をする方もいます。ご希望の方は事前に警察署に申請要件をよくご確認の上、ご利用ください。
【4】まとめ
古物商になるためには古物商許可の取得が必要です。さらに古物商の許可申請を行う際には営業所を設置することも求められます。バーチャルオフィスやレンタルオフィスは、費用が抑えられるという点で営業所にしたいところですが、施設の特性によって営業所として使えるもの使えないものがあるため、事前にしっかりと調査することが必要です。また、無許可のまま事業を始めると重い罰則がありますので必ず許可は得ておきましょう。