法人設立後は、法人口座やクレジットカードなど資金に関係したことに思いがいくものですが、まず期限が定められた役所関係の手続きを中心に、滞りなく済ませることが大切です。
ここでは、手続きを行う役所の種類や提出期限、と必要書類などを中心に説明します。
目次
1.提出書類について
1-1.税務署への提出書類
法人設立すると、法人として税金を納付する必要があるため、会社の本店所在地を管轄する税務署への届け出が求められます。
税務署への必要書類の一つが「法人設立届出書」で、会社設立日から2か月以内に提出します。なお、こちらの書類は管轄の税務署や都道府県、市町村役場にも提出する必要があります。
必須ではありませんが、「青色申告承認申請書」も提出すると良いでしょう。こちらは確定申告を節税効果が見込める青色申告で行なうための手続きです。会社設立日から3ヵ月以内、あるいは最初の事業年度終了日の前日のどちらか早い日までに提出します。
従業員を雇う予定がある場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」も提出します。こちらの書類に提出期限はありませんが、提出した翌月から制度が適用されます。
加えて、給与などの支払いを受ける方が常時10人未満の場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すると良いでしょう。通常であれば毎月行うべき源泉所得税の納付が、半年に1回に軽減されます。こちらは事務所を開設後1ヵ月以内に提出が求められる書類です。
1-2.年金事務所への提出書類
また、年金事務所での手続きもあります。会社設立から5日以内に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を、被保険者資格を取得した日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険の被保険者取得届」を提出します。被保険者に扶養者がいる場合は、被保険者資格を取得した日から5日以内に「健康保険被扶養者届」の提出も必要です。
なお、社長一人だけの法人であっても社会保険への加入は必須となるため、早急に手続きを行うと良いでしょう。
1-3.労働基準監督署への提出書類
会社設立後に従業員を雇った場合は、労働保険関連の書類を労働基準監督署に提出します。正社員・パート・アルバイトの別を問わず、初めて従業員を雇った場合は、雇った日の翌日から10日以内に「労働保険の保険関係成立届」を提出します。
加えて、労働者を雇った日の翌日から50日以内に「労働保険概算保険料申告書」を出します。さらに、労働者を雇うたびに「適用事業報告書」を提出するのを忘れないようにしましょう。
1-4.ハローワークへの提出書類
労働基準監督署での手続き終了後、ハローワークにて雇用保険の手続きも必要です。従業員を雇用した翌日から10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格届」を提出するほか、「保険関係成立届」も必要です。
2.設立直後にやるべきことは?
設立直後にやるべきことの一つが、法人口座の開設です。事業の取引を個人名義の口座で行なっても法的に問題はないですが、長期的に考えるとやはり法人口座を開設するといくつものメリットがあるのでおすすめです。
まず、法人口座の開設には審査が求められるため、開設できた会社の社会的信用度は高くなります。また、融資の申請も有利になります。お金の流れを把握しやすくなり、正しい会計処理を行ないやすくなるのも利点です。
法人名義のクレジットカードを作成して経理業務の効率化を図ることもできるため、可能であれば法人口座を開設するようおすすめします。
なお、法人名義のクレジットカードは、会社設立直後に作れるものも増えています。開業直後でも発行可能と明示していたり、会社の業績を示す書類の提出が不要であったり、法人の代表者の個人信用情報で発行可能なものを中心に検討するとよいかもしれません。
加えて会計処理環境の整備も進めていきましょう。会社を設立すると、期末に財務諸表を作成するとともに、法人税の確定申告や納税義務が発生します。加えて、株主に財務状況を開示する責任も生じます。そのためには、日々の取引を元に帳簿を作成し、買掛金の支払いや売掛金の入金確認や消し込み、請求書や領収書の発行などの月次業務を行い、決算に向けた体制作りが必要です。
年次決算では、実地棚卸しや償却資産の把握に加え、決算書類を作成し、法人税や消費税などの税務申告や納税が必要です。年次決算以外の業務として、従業員の年末調整や賞与支給などもあります。
上記の業務を行うには、簿記や原価計算、税金などの知識が必要になります。会社規模や取引のボリュームが小さい場合は、法人税の申告は税理士などに依頼し、そのほかの経理業務は社長自ら行うこともできるでしょう。それでも、ビジネス遂行に影響が出ると考えられる場合は、経理を専門に行う従業員を雇ったり、税務顧問契約を結んだりして経営のアドバイスを求める方法もあります。
会計ソフトもたくさん種類がありますので、自分に合ったやり方で進めていくとよいでしょう。
3.自社にとってやった方が良いことは?
商品を販売する、サービスを提供するなど、ビジネス形態は千差万別です。そのため、会社設立後にやるべきことはビジネスの種類や手法により異なります。
- 例えば、法人設立の際の電話契約について考えてみましょう。
法人登記では携帯電話での登録も可能になりましたが、依然として信用性が高いのは固定電話といわれます。仕事の取引において、相手が何を求めるかにより固定電話番号の取得を考えることもできますし、影響がない場合は経費節約に役立つ050番号などを検討しましょう。 - スムーズなビジネス展開や信頼を得るため、ホームページの開設することも検討しましょう。
事業内容、主な商品・サービス、連絡先など最低限どのような会社なのかを示す役割があります。また会社名と一致したドメイン名の取得はブランディング的にも良い方法です。 - 名刺やパンフレットを作成しておくと業務内容を一目瞭然で伝えられるほか、会社としての信用力を高めることができます。
一昔前と比べて、今はチラシやパンフレットの印刷代が劇的に安くなっています。 - 業種によっては、リサイクルショップや飲食店業、宿泊業、運送業、タクシー業など許認可申請が求められるビジネスがあります。
設立前に、自分のビジネスに許認可申請が求められるかを確認し、申請条件、費用、取得までのスケジュールなど必要最低限のことは積極的に申請する機関に確認しましょう。
法人設立後は、提出が必要な書類や手続き、事業を継続していくにあたって早めにやっておいた方がいい事が意外とたくさんあります。後から慌てないように早めにリストアップして準備しておきましょう。