人生100年時代と言われるなか、働き方にも大きな変化が出てきています。そこで、50代、60代からの起業を考えるときのポイントをご紹介。新しくビジネスを始める方を応援する記事です。
目次
シニア起業の現状について
ここ数年、50代、60代の方の起業が増えてきています。勤務先で定年を迎えた方、早期退職した方、あるいは育児の手が離れ、自分の世界を持ちたいと考え始めた方……と、タイプはさまざまですが、誰にも雇われずに自分が主役となって起業する方が続々と現れてきています。
その多くの方が、第二の人生の「生きがい」として、身の丈にあった小さな規模のビジネスを楽しみながら続けています。弊社はシニアの起業支援を行っていますが、みなさんからは「仕事をして自分らしく働くことで、生活にハリを持てる」「仕事のおかげで若々しくいられる」という声が寄せられています。人生100年時代を乗り越えるため、再雇用や再就職以外の選択肢として「起業」が選ばれ始めているのです。
シニア起業の人気の職種
実際に、50代、60代の方が始めている起業の例を見てみましょう。
シニア起業は、これまでの経験を活かして起業される方が多いのが特徴です。前職でのスキルや過去の人脈を仕事に活かしています。職種でいうと、「コンサルタント」と「営業代行業」の2 種類が特に人気があります。
「コンサルタント」は経験を活かし、「営業代行業」は人脈を活かした職種です。人気の理由は、設備投資や仕入れといった初期費用がほとんどかからないといったメリットがあるためです。
「コンサルタント」は、「顧問」や「アドバイザー」と名乗る方もいますが、専門家として人にアドバイスをしてお金をもらう仕事です。個人向けにはファイナンシャルプランナーやカウンセラー、法人経営者向けには財務や人事育成のアドバイザーなどがあります。売り上げは相談料、月額顧問料、販売や事務の手数料とさまざまです。
シニア起業におすすめしたい「ゆる起業」とは
弊社では、50代60代の方の起業相談で、皆さんが望む理想の起業だという要素をまとめて「ゆる起業」と呼んでいます。「ゆる起業」のイメージは、やりがいのある仕事を自分のペースで進める起業スタイルです。
ゆる起業の特徴には以下の5つがあります。
- 楽しいと思える・・・自分の好きな仕事をする
- やりがいを感じる・・周囲に自分が必要とされていると実感できることを重視する
- 経験を活かす・・・・新事業に挑戦するより、結果を残しやすい経験を活かした事業をする
- 利益を追求しない・・事業拡大より事業の継続を望む
- 健康が一番・・・・・働きすぎないように気を付ける
ゆる起業が本人にもたらす効果
自分の好きな仕事で、無理せず、適度な収入を得るための起業をしているため、やりがいを感じたり、ワークライフバランスが実現できたと喜んでいる方が多いです。働く時間を調整できて、就業場所も自由なため、身内の介護や体調の問題で出勤して定時で働くことが難しい方も、起業すると働き続けやすくなります。
また、起業すると様々な業界・立場・年齢の方と出会う機会が増えます。人と出会うことで自分の視野や世界が広がり、人生にハリがでたという声も多いです。
シニア起業で失敗する理由
失敗してしまった人に共通する事項をまとめました。次の項目に当てはまると思う方はご注意ください。
1.前職で培ったつてを当てにし過ぎる
起業当初、サラリーマン時代の人脈を頼るのは仕方のないこと。しかし実際には、その人たちから仕事をもらえたら、かなりの幸運です。本当の「独立」のために新しい顧客を積極的に開拓しましょう。
2.横柄な態度をとる
大会社で要職に就いていたりすると、ついその延長線で物事を考えがちです。起業後は新人に戻るくらいの謙虚な気持ちで臨むと、周囲の人も好意的に受け取ってくれます。
3.前の会社名や役職を名刺に書く
「元〇〇商事」などと書かれた名刺は、あまり良い印象を持たれません。会社名は会話の中で伝えましょう。
4.市場調査をせずに過度な自信を持つ
前職の経験を活かして起業する人は約8割に上りますが、同じ分野で起業すると、いわゆる「勘」で動いてしまいがち。他社との差別化を図るためにも、競合他社の動向など市場調査をきちんとしましょう。
5.過去の成功体験に固執する
かつての成功が忘れられず、今のニーズをつかめない、またはつかもうとしない方は要注意です。時勢に合わせた商品・サービスの改良は必須です。
シニア起業をするための情報収集
起業のための知識やヒントを得るには書籍やインターネットのほか、専門家に相談したり、実際に起業している先輩の話を聞いたりすることが有効でしょう。
そのほかには、起業セミナーがおすすめです。行政や自治体のほか、民間企業も行っています。女性や若者、シニア向けなどターゲットを絞ったものや、モノづくりやIT業界で起業する人向けなど特定の業界を対象にした講座もあります。座学で数時間なので、効率的に知識を身に付けることができます。
また、中小企業診断士やインキュベーションマネジャーに起業相談をするのもいいでしょう。個別相談なので、悩みや課題を質問してもいいし、事業プランを説明し、指摘やアドバイスをもらうこともできます。
セミナーや起業相談は、無料・有料問わず数多くありますので、まずは気になる施設に連絡してみましょう。
起業資金の調達方法
1.起業資金とは
事業を始めるために前もって用意するお金を起業資金といいます。起業資金は、最初にかかる経費(初期投資)と毎月かかる経費(運転資金)の3ヵ月分程度が必要です。
2.起業資金の調達方法
起業資金は、自分のお金(自己資金)でまかなうか、人から借りる(融資)方法などがあります。融資を受ける場合は、自己資金をどれくらい持っているかが審査の重要なポイントになります。金融機関などからの信頼を得るためにも、計画的に起業資金を貯蓄しておくことが重要です。
自己資金以外に資金調達をする方法として、➀融資 ②補助金・助成金 ③出資 ④クラウドファンディングなどがあります。
それぞれの方法にメリット・デメリットがありますので、性質の違いを理解したうえで、自身の事業に最適なものを活用しましょう。
➀融資
融資とは金融機関などからの借入で、返済する必要がある資金です。起業する人にとって優遇措置が多い公的な融資制度も多くあります。ただし、返済が必要なお金ですので、資金繰りを十分に吟味し必要な額だけ借りるようにしましょう。
②補助金・助成金
補助金・助成金とは中小企業支援のために国や公共団体などの機関が支給する返済不要の資金です。誰でも受けられるわけではなく、それぞれの機関が定める要件を満たす必要があります。
補助金・助成金の制度は、種類も数も非常に多く、制度の改廃が多いため利用する際には募集内容を確認するなど注意が必要です。
③出資
出資とは身内や取引先から出資してもらう場合が多いですが、ベンチャー育成の投資ファンドや個人投資家などから出資を受ける人もいます。しかし出資者は株主ですので出資比率が高いと経営に対して影響力が強くなります。雇われ社長にならないよう、出資してもらう額は慎重に考えた方がいいでしょう。
④クラウドファンディング
インターネットを通じて不特定多数の賛同者から資金提供を募る方法です。
ネット上にプロジェクトを公開し、期限を設けて目標額を達成できるよう営業活動をします。
3.起業資金の額
弊社のお客様でシニア起業された方のお話を伺うと、50万円以下の起業資金で始められた方が最も多いです。少ない投資で小さく始め、徐々に事業を拡大させていくお考えのようです。一昔前と比べて、起業は一か八かの挑戦ではなく、より身近なものになりました。働き方の一つの選択肢として考える方が増えています。
国などが実施する起業に関する公的支援サービス
国の成長戦略に開業率向上が掲げられてから、国や公共団体が実施する起業に関する助成金や融資制度などの公的支援サービスが充実しています。これから起業を考えている方は、積極的に活用していきましょう。ここでは、具体的なサービスについて紹介します。
東京都中小企業振興公社「創業助成事業」
「創業助成事業」は、都内創業予定者等に対し、創業期に必要な経費の一部を助成する助成金です。
助成対象経費:従業員人件費、賃借料、広告費、備品費など創業期に必要な経費
助成率等:助成対象経費の3分の2以内(助成限度額300万円)
東京都「女性・若者・シニア創業サポート事業」
「女性・若者・シニア創業サポート事業」は、東京都内での地域に根ざした創業を支援するために東京都が創設した制度です。女性、39歳以下または55歳以上の男性で、都内で創業予定の方、または創業後5年未満の方が対象となります。
信用金庫・信用組合から無担保・低金利で融資が受けられるほか、個別相談、事業計画書作成支援、経営支援が受けられます。
横浜市創業支援事業計画
横浜市では、産業競争力強化法に基づき国から創業支援事業計画の認定を受け、地域の創業を促進させる施策として、横浜市内における創業支援の取り組みを推進しています。
- 登録免許税の減免
- 横浜市中小企業融資制度「創業おうえん資金」などで融資利率が優遇などのメリット
- 日本政策金融公庫で貸付利率引き下げなどのメリット
川崎市創業支援事業計画
川崎市及び関係団体では、国(総務省・経済産業省・関東農政局)に認定を受けた「川崎市創業支援等事業計画」に基づき、起業・創業に向けて検討・準備されている方や、創業後の事業拡大にお悩みの方のため、創業段階や業種等に応じた各種支援を行っています。
- 登録免許税の減免
- 信用保証協会による保証限度額増などのメリット
- 日本政策金融公庫で貸付利率引き下げなどのメリット
固定費を抑えるレンタルオフィスの活用
起業するにあたり、事務所を構えなければならないと思う方も多いですが、事務所を構えると固定費がかかり起業初期の大きな負担となります。まず、店舗を持たずに事業ができないか考えてみましょう。今は事務所が必需というわけではありません。自宅を事務所として利用したり、レンタルオフィスを利用することを検討しましょう。
最近増えているレンタルオフィスには、仕事を行うために必要な机・椅子・電源・インターネット環境があらかじめ揃っていますし、御社の代わりに電話応対を代行する秘書サービスなども利用できます。自分で事務所を構えるよりも安価に好立地・一等地のオフィスを構えられるのも大きなメリットです。
また、店舗型の事業を始める方も、店舗を持たないで事業ができるか考えてみるとよいでしょう。事業の形態には、店舗を持たない無店舗販売もあり、必ずしも実店舗にこだわる必要はありません。
例えば、顧客に来店してもらうのではなく、自らが顧客のところへ足を運べば、サービスを提供できる場合があります。車を店舗代わりにして移動販売にするという方法もあるでしょう。やはり商品を販売するための店舗が欲しいということであれば、事業が軌道に乗るまでは、期間限定の催事で出店したり、自分でお店を出すのではなく人のお店に商品を置いて販売してもらう方法もあります。
最後に
いかがでしたか。長文にもかかわらず最後までお読みいただきまして、どうも有難うございました。
弊社は今まで約7,000人の起業相談に対応してきました。過去相談していただいた方の中には、起業する事業分野で迷っている方、事業内容は決まっても上手くいくか分からず不安を感じている方、起業してスタートしたけど毎日おきる課題を解決しようとしている方、様々です。
皆さんにとって、より素晴らしいセカンドライフになるよう、応援しています。何かお困りごとがございましたら、いつでもご相談ください。